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ジャンプ漫画を読んでいる人なら知らない人はいないであろう人気漫画「HUNTER×HUNTER」。

その人気の理由を、小説家を志す私の個人的な考えを含めながら分析していきます。






ハンターハンターは1998年より少年ジャンプで連載。現在は32巻まで発売されています。

 

あらすじ
父と同じハンターになるため、そして父に会うため、ゴンの旅が始まった。同じようにハンターになるため試験を受ける、レオリオ・クラピカ・キルアと共に、次々と難関を突破していくが…!?




【一般的な見解】


理由その1 漫画の王道的な面白さ

ジャンプ漫画のテーマである「友情」「努力」「勝利」を盛り込んだ王道漫画の典型。
冒険要素や格闘要素をふんだんに取り込んだ魅力的な世界観。
ワクワクする設定や先が気になる引き込まれるストーリー。

キャッチーな設定や世界観で多くのファンを生み出しました。

理由その2 キャラクターの魅力

作中に登場する個性的な人物たちがそれぞれの目的の為に知略を巡らせながら協力したり、ときに戦ったりと、キャラクター人気も衰えません。
序盤から中盤にかけてはゴンやキルアといったメインキャラ中心に話が進んでいましたが、徐々に他のキャラにもスポットが当たっていき、現在は群像劇の様相を呈しています。

理由その3 念能力の面白さ

能力バトルの要素も人気のひとつ。とくにハンターハンターは一般的な超能力バトルとは一線を画す「念能力」という独自の特殊能力が登場します。
習得のしやすさやパラメータのような系統分けなどゲームのような設定、さらに「伸縮自在の愛(バンジーガム)」「不思議で便利な大風呂敷(ファンファンクロス)」など独創的な能力名もセンスが溢れています。

以上が一般的にこの作品が人気である所以だと思われます。


【クリエーター的な見解】

ここからは私個人の考察に基づいた話になります。
物書きを志す者として、やはりヒットしている作品がなぜ受けているのか考察せずにはいられないというものです。

創作者目線で考えていくので少々専門的な話になりますがご容赦ください。

★プロット的な面白さ

「プロット」とは、漫画や小説などのストーリー部分を形作る物語の骨組み。言わば設計図のことです。
ハンターハンターはこのプロットにおいて非情に優れているのです。

プロットをわかりやすく説明すると、例えば昔話の「桃太郎」の話の流れで考えてみると、

おばあさんが拾った桃から桃太郎が生まれる → 成長した桃太郎が鬼退治に出かける → 道中でお供の動物たちを仲間に加える → 鬼が島に着いた桃太郎は動物たちと鬼を退治して財宝を持ち帰る

という筋書きが浮かび上がります。この話の流れこそがプロットです。
この流れをさらに簡略化してみましょう。

A(桃太郎)が旅に出る → 道中でB、C、D(犬、猿、キジ)が仲間になる → 場所E(鬼が島)にたどり着いた一行はボスキャラである鬼を倒す

旅に出て、仲間を集めて、ボスを倒す。この流れどこかで見たことありませんか?

実はこの筋書き、「ドラゴンクエスト」「ONE PIECE」と同じなのです。
ドラクエやワンピースは桃太郎と骨組みは同じ。それぞれ肉付け(世界観や設定)が違うだけというわけです。

このように桃太郎の話はプロットで見ると物語の王道中の王道であるのがわかります。

さらに、このようにストーリーのプロットを見たときに「旅に出る」「仲間を集める」「ボスを倒す」など共通のパターンが出現したことに気づきます。

物語を極限まで分解したときに現れるこのよなパターンをここでは仮に「要素」と呼称することにします。

要素は読者が作品を鑑賞する上でのモチベーション・原動力のきっかけになりやすいものです。
つまり読者に受けやすい要素が多く取り入れられている作品ほど人気に結びつき易くなるのです。
それは先に出た「仲間集め」や「旅」「冒険」の要素などが例です。

話を戻しましょう。実際にハンターハンターの各編ごとにプロットを要素に分解します。
いったいどれほどの要素が抽出できるでしょうか。
ハンターハンターのストーリーを振り返りながら(うろ覚えですが)見ていきましょう。

【ハンター試験編】

主人公のゴンは優秀なハンターである父親のジンに憧れてハンターを目指しながら父親を探す旅に出ます。
・ここでまず「旅」「冒険」の要素が出てきます。さらに父親を見つけるという目的、つまり「人探し」の要素が抽出できます。人探しは「母をたずねて三千里」などの根幹にもなっています。
ハンター試験を受けるゴンは道中でキル、クラピカ、レオリオという仲間に出会い、共に試験を突破していきます。
・「試験」という要素がまず出てきます。前作幽遊白書でも使われていました。さらにこのハンター試験が非常に自由度、独自性が高く、様々なルールの下で行われ、「ゲーム性」の要素を持ったものでした。
これに限らず冨樫作品ではゲーム性を帯びた展開が非常に多く取り入れられており、よく頭を使って読む作品だといわれます。
試験の一環で、島の中でプレートを奪い合うサバイバルが展開されます。そこでゴンはライバルであるヒソカに挑みます。
・ここでは「サバイバル」、さらに殺してプレートを奪ってもよいという「殺し合い」の要素があります。
殺し合いは「バトルロワイヤル」など様々な作品でテーマになっている読者の興味の高いジャンルです。
さらにヒソカと戦うという「対決」要素もあります。
最終試験まで残ったゴンたちは、トーナメント戦により合格者を決めることになります。
・ジャンプ作品の王道展開である「トーナメント」、敵と戦う「対決」の要素が出てきます。

【ゾルディック編】

ゾルディック家に連れ帰されたキルアを連れ戻しに、ゴン一行はキルアの下に向かいます。
・ここでテーマになるのはゾルディック一家という非常にアクの強い「家族」、さらにキルアを連れ戻しに、もとい助けに向かうという「仲間の救出」が挙げられます。仲間の救出は登場人物にもかなり強い動機になるので様々な作品で多用されます。
・家族は「家族もの」というジャンルがあるほどにテーマとしては大きなものです。

【天空闘技場編】

キルアと再開したゴンは、修行のため天空闘技場に挑戦します。そこで念能力の存在を知り、念の力を磨いていきます。
・ここでは「修行」「大会」「能力バトル」「対決」が出てきます。
ゴンは闘技場で因縁のあるヒソカと再開し、再び戦い対決します。

【幻影旅団編】

大都市ヨークシンにて、クラピカは一族の仇である幻影旅団を探して復讐しようと行動します。
一方でゴンとキルアもヨークシンを訪れ、父親の手掛かりであるゲーム・グリードアイランドが出品されると知り、落札するために金を稼ぎ始めます。

・まずここではカリスマ犯罪組織である幻影旅団、つまり「組織」と「強そうな肩書き」の要素が出てきます。これは他作品でもよく登場し、例えば「暁」「エスパーダ」「七武海」「ギニュー特戦隊」などが有名。クラピカの原動力である「復讐」もテーマです。
・一方でゴンとキルア組は高額のゲームを手に入れるためにマネーゲームのように金を稼ぎます(ゲーム性)。
・その裏で、クラピカによって仲間を殺された幻影旅団たちは犯人であるクラピカを探します(人探し)。

【グリードアイランド編】

ゲームへの挑戦権を得たゴンとキルアは、ゲームをクリアするためにカードや情報を集めていきます。
・カードを集めるという「物探し」「物集め」、さらにゲームそのものであるため「ゲーム性」、師であるビスケと出会い念能力の「修行」を付けてもらいます。
・一方でゲーム内ではボマーと呼ばれる殺人鬼がプレイヤー狩りを行っていました。犯人が誰かわからないという状況の中での「犯人探し」。さらには「殺し合い」もあります。
・ゲームを進める中でゴンたちは因縁の男であるヒソカに出会うも、共通の敵を前にして共に戦います。熱い展開の代表格である「敵との共闘」の要素です。
ゲームマスターの一人であるレイザーとの念によるドッジボール「対決」。
このドッジボール編も非常にゲーム性に富んでいます。念能力という能力バトルにルールが絡むことで完全にゲームと化しています。

【キメラアント編】

ゲームをクリアしたゴンたちは、父親探しの道中に出会った男カイトと共に、突如現れた未知の生物巨大キメラアントの調査に乗り出します。
・まず「未知の敵」と戦うという要素が出てきます。これは「エヴァンゲリオン」や「進撃の巨人」など侵略系や世界系の作品でもよく登場する要素です。
・さらに危険なキメラアントとの「殺し合い」、味方に寝返ったキメラアントとの「敵との共闘」などが挙げられます。

【アルカ編・選挙編】

キメラアントとの戦いで命を落としたネテロ会長の変わりにハンターの次期会長を決める選挙が行われることになります。
その裏でキルアはキメラアントとの戦いで瀕死となったゴンを救うため、妹であるアルカの下を訪れます。

・ここでは選挙という「ゲーム性」の強いものがテーマです。さらに十二支んの登場やヒソカの点数付けによる「強さの格付け」も出てきます。これは他作品でもランキングや強さの順位などで表されることが多いです。
キルアはアルカの能力を使いゴンを助けようとしますが、キルアの兄イルミがそれを阻止しようとアルカの命を狙います。
・キルアはアルカを連れて逃げ回りますが、これは「逃走劇」の要素です。映画「逃亡者」などでテーマになっています。
さらにアルカを狙った「マクガフィン争奪戦」でもあります。
マクガフィンとは、物語の渦中における登場人物たちの動機付けになりうる「何か」のことです。例えば泥棒が狙う宝石や金の入ったケース、警察が保管する秘密の文書などです。
この場合はアルカの能力が鍵になっているのでアルカを中心に話が進んでいます。
もうひとつ、アルカの能力に関する「謎」も強い要素で、読者の興味を引っ張る要因になっています。

このような具合に、ストーリーを紐解いていくと様々な要素に分解できます。
ハンターハンターは読者の興味を惹きやすい要素がこれでもかと盛り込まれていたのでここまでの人気が出たというわけです。

ただ、普通の作品はここまで多くの要素を詰め込むのは難しいものです。
しかしハンターハンターは各編ごとに目的もスポットが当たる登場人物も変わってくるため、様々な要素を取り入れても破綻しないのです。

売れるものを描ける人は、どういうものが受けるかというのがちゃんとわかっていてそれを実践している、つまり読者のツボを心得ているというわけです。

幽遊白書、ハンターハンターとヒットを飛ばした実績を持つ冨樫氏だからこそ、どれだけ休載しても許されるというわけですね。


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